「自然から材料を採ってきて、自分でつくった物を身につけている人がいたら、手をあげてください」
この文章から始まるこの本は、材料から工具まで、全て自然から自分で採取し自ら舟を制作する全行程を書かれた児童向けの大判の本です。1つの舟をつくる手間や知恵について学んだり、力強い写真が見るものを楽しませてくれます。
・ 舟をつくる最初の工程は工具の鉄を作るために砂鉄集め。5キロの鉄器をつくるのに120キロの砂鉄が必要となる。砂浜を50人で3日かけて採集する。
・ 砂鉄を鉄に変えるには炭焼きが必要となる。120キロの砂鉄に対し木炭は300キロ必要。さらに炭材は3トンもいる。
・ マンダールという民族の船大工は、舟をつくるための木を切る前に、木へのお祈りを捧げる。木の中に宿る精霊に他の木へ移るようにお願いするそうな。
・ 巨木を削って舟をつくる。ノコギリは無いのでくさびを打ち込んではがし、表面を削って板を作ったりする。
・ 縄や帆は植物の繊維や帆を使って作る。最近は全てナイロン製のものが使用されている。
これらは関野吉晴さんという大学教授が日本列島に人類がやってきた足跡をたどる旅の一環として舟を全て手作業で製作したもので、実際に制作した舟をつかって東南アジアから日本まで航海の旅に出たそうです。
読後に何かにチャレンジしたり旅にでたくなる一冊でした。